猫エイズの治療に西洋の医学と併用して漢方薬を用いる獣医師も増えている

猫エイズ を漢方薬で治療する

漢方薬の基礎知識

漢方とは「漢(中国)に起源を持つ医学」という意味で、治療のために用いられる生薬(しょうやく)を「漢方薬」と言います。生薬というのは、植物や動物、そして鉱物などの中に存在する薬効成分から作られた薬のことですが、生薬のすべてが「漢方薬」というわけではありません。たとえば、精神を安定させる効果が期待できる生薬のセント・ジョーンズ・ワートなどは「植物療法」とされ、漢方薬とは区別されています。

漢方の医学では、患者の治療は「証」(症状や体質)に基づいて行われます。西洋医学であれば、一定の症状や病名によって薬が決定しますが、漢方薬の場合には、たとえ同じ症状、病名であっても、患者の体質や病気の状態によって生薬の組み合わせが違ってくるのです。


猫エイズのための漢方治療

猫エイズを発症すると、口内炎や下痢、熱、食欲不振、元気消失などの諸症状が出てきます。これらの症状に対し、西洋医学では抗生剤や抗炎症剤などを投与しますが、こうした薬剤は、ウイルスそのものを攻撃してやっつけることはできても、自分の身体を守ったり、自らの免疫力を上げるといった効果を期待することはできません。また、副作用などの問題も起こりがちです。

口内炎にしばしば用いられるステロイドの場合ですと、即効性や短期的な効果は期待できても、長期連用すれば、糖尿病などさまざまな副作用を引き起こすことにもなりかねません。(⇒口内炎とステロイド)

そこで注目されているのが、体全体のバランスを整えながら、動物が本来持っている自然治癒力を高めてくれる漢方薬なのです。西洋医学をベースとした治療を進めながら、それを補うものとして漢方薬を併用すれば、より大きな治療効果が期待できるとされています。


動物病院での漢方治療

獣医科大学では、今のところ、ペットに対する漢方治療についての教育を体系立てて指導しているところはありません。しかしながら、病理については人間と猫などの動物には共通の傾向がありますから、西洋医学に限界を感じている獣医師などが、最近では漢方薬を積極的に治療に取り入れるようになってきています。

ただし、動物に対する薬方処方は人間のように確立されていませんから、試験的な投薬であることを、飼い主も理解しておく必要があります。漢方は、あくまでも西洋医学の治療を補完するものとして捉えられているのが現状です。


猫エイズに使われる漢方薬

猫エイズに効果があるとされている漢方には、化学的に様々な薬理作用が認められている「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」があります。その他には、黄連(おうれん)や柴胡(さいこ)といった生薬を含むものが使われます。

漢方薬は歴史が長く、西洋医学の概念とはまったく違う視点で薬が処方されますから、猫エイズに対しても、猫の状態や病気のステージによって処方される薬が異なってきます。どの漢方薬を使うかは、漢方に精通した専門家の知識が必要ですし、漢方だからといって副作用がまったくないというわけではありません。必ず獣医師の判断を仰ぐようにしましょう。



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