猫エイズの感染に伴う口内炎にはステロイドが用いられるが、効果がある反面、副作用があることにも注意が必要。

猫エイズによる口内炎のステロイド治療

ステロイドとは

猫エイズに感染すると、口内炎が重症化することがあります。口内炎の治療には、即効性があるだけでなく、インターフェロンなどと比べて安価であるといった理由から、副腎皮質ホルモン剤であるステロイドを処方されるケースが多いようです。

ステロイドはうまく使えば効果もありますし、便利な薬なのですが、漫然と投与し続けると、後に副作用に苦しめられることがあります。あくまでも炎症を抑える対症療法のひとつと考え、炎症がきわめて激しい場合の少量使用を除き、長期連用、連続投与は避け、安易に頼らないことが大切です。特に猫エイズの場合には、口内炎の治療が仮にうまくいったようにみえても、ステロイドの免疫抑制作用で、かえってエイズウィルスを活性化してしまうことがありますから、ステロイドの使用は慎重に行う必要があります。


口内炎にステロイド

猫エイズに感染するといろいろな全身症状が現れてきますが、その中でも特に厄介なのが難治性の口内炎です。口内炎が悪化し、次第に食事を取ることができなくなる様子を見ているのは、飼い主としてとても辛いことです。動物病院に連れてゆけば、ほとんどが口内炎の治療にもっともシャープな効果を期待できるステロイドを投与されることになります。(⇒猫エイズの症状)

副作用という点を除けば、現段階ではステロイドに勝る薬はないとされていますが、ステロイド投与はあくまでも症状を緩和させることが目的で、投与することによって口内炎そのものが完治するということではありません。効果が持続している間は痛みは和らぎますが、それは一時的なものにすぎないのです。


ステロイドの副作用について

ステロイド剤の副作用は、猫にはあまり出ないとされていますが、長期連用、連続投与を行えば、以下のようなさまざまな副作用を避けることはできません。

(1)リバウンド
ステロイドは痛みの緩和に対して急速な効果があるため、投与後、一見口内炎が治まったかのように思える時期があります。しかしそれは一時的なもので、効き目が切れたり治療を中止したりすると、以前よりもひどい状態になってしまう、いわゆる「リバウンド状態」が起こることがあります。

(2)エイズウイルスの活性化
ステロイドは、癌を治療する際の「免疫抑制剤」として用いられます。つまり、炎症を抑えるだけではなく、同時に免疫を抑制してしまう薬でもあるのです。ですから、猫エイズに感染した猫にステロイドを投与すると、体の免疫が抑制されてしまい、ウイルスが活性化してしまうことになるのです。ステロイド剤の投与は、炎症の場合には低用量が、免疫抑制のためには高用量が用いられますが、長期連用すれば、いずれの場合も猫エイズの進行を早めてしまうことになりかねません。

(3)皮膚への副作用
ステロイドを大量に2ヶ月以上投与した場合、もしくはステロイドを少量で1年以上の長期間にわたって投与し続けると、副腎機能の低下が起こり、「ステロイド皮膚症」と呼ばれる皮膚への副作用が現れます。猫の場合には皮膚萎縮が起こったり、皮膚が薄くなってしまうため、舐めただけでも簡単に出血してしまうなどの症状が見られるようになります。また、皮膚の免疫力が低下することで、ダニや細菌、カビなどにも感染しやすなったり、脱毛症状が起きることもあります。これらの副作用については、筆者も実際に経験しています。

(4)糖尿病などの副作用
2年以上にわたって継続的にステロイドを投与すると、完治不能とされている「医原性糖尿病」という糖尿病や、「ステロイド性腎症」と呼ばれる慢性腎不全を引起すことがあります。ステロイドは肝臓での糖の生産を高める働きがあるため、次第に血糖値が高くなることで糖尿病の発症につながってしまうのです。ステロイドの副作用すべてに言えることですが、長期投与、高用量投与になればなる程、その危険性は高まります。

(5)次第に効果がなくなる
口内炎の痛みなどによって食事が食べられなくなると、通常1月に1回程度を目安にステロイドが投与されることになります。しかし、ステロイドを少量ずつ投与した場合の効果は薄く、短期間で耐性ができてしまうため、ステロイドが効かなくなってしまうケースが多くみられます。その結果、口内炎の悪化に伴って投与期間を短かくしたり、長期連用をしなければならず、副作用を誘引することになります。(⇒猫エイズの食事管理)


副作用を減らす投与方法

初めにステロイドを大量投与をし、猫エイズの症状である口内炎が緩和しはじめた段階で、時間をかけながら少しずつ投与量を減らし、最終的にステロイドを切るという方法が、一番効果的であり、副作用もないとされています。

副作用が生じた時点で急にステロイドの投与を中止しても、ステロイドは長時間体内に残留していますから、なかなか元には戻りません。そんなことにならないためにも、ステロイドの投与は慎重に行い、頼り過ぎないことが肝心です。



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